| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T06-2

格子モデルはこうしなさい - How to 格子モデル -

江副日出夫(大阪府立大・生物科学)

格子モデルは、空間構造が生物の個体群動態や適応進化に及ぼす影響を理論的に研究するための簡単便利なフレームワークとして幅広く使われるようになってきている。格子モデルの研究は主にコンピュータシミュレーションによる解析に依っているが、他の研究者による格子モデルの具体的な実装方法に触れる機会は少ない。そこでこの発表では、まずパソコン上で格子モデルのシミュレーションを実行したり結果を図示したりする環境(C言語・R言語・Mathematicaなど)について具体的に解説した後、シミュレーションの実装方法に関して私の経験に基づく考察を試みることにする。

格子モデルのシミュレーションプログラムにおいては、格子空間の状態を記述するために多次元配列が使用されることが多いが、境界条件などのイレギュラーな近傍処理を行うためにはイレギュラーな(つまり誤りを冒しやすい)プログラム上の処理が必要になる。さらに、近傍が不規則な不規則格子では配列による記述は困難である。このような問題を回避するためには配列よりもノードのようなデータ構造を用いた方が都合がよいが、一方でモデルの性質によってはノードを用いた場合に不都合が生じる。発表者による進化的に安定な移動分散戦略の研究例を題材にして、このような欠点を克服した簡潔で汎用性の高い格子モデルシミュレーションプログラムについて考える。

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