| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T06-3

こうでありたい個体ベースモデルの実装

高須夫悟(奈良女子大・理)

個体ベースモデルが生態学の様々な分野で用いられるようになって久しい。しかし、個体ベースモデルを謳うモデルの多くは、おそらくはプログラミング実装上の問題からか、個体の出生・死亡・移動に関して、現実的とは思えない不自然な制約を伴っているのが実情である。

「個体」を単位とするシミュレーションをするなら、出生・死亡・移動といった生物個体が生涯に経験する過程を、可能な限り現実的な仮定の下で再現できることが望ましいと考える。本講演では、不自然な制約の無い普遍的な個体ベースモデルを実装する枠組みを紹介し、日本における個体ベースモデラーの裾野を広げることを目指す。

普遍的な個体ベースモデルとは、1)個体に任意の属性(空間位置、戦略セット、過去の履歴など、個体の適応度に影響する情報)を割り当てることが可能、2)各個体はシミュレーション時のいかなる時点においても他個体と区別される、3)個体数は動的に変化可能、の条件を同時に満たすモデルである。

これらの条件を満たす個体ベースモデルをプログラムとして実装するためには、個体の動的生成・削除が不可避となる。本講演では、C言語の構造体を用いた個体が保持する属性の定義、個体の動的生成・削除を容易にする集団のリスト構造表記の解説に始まり、Rickerモデルといった単純な個体群動態モデルを空間構造などを含む現実的な個体ベースモデルとして拡張する具体例を紹介する。これらの具体例を通じて「個体」を単位とする普遍的な個体ベースモデリングの実装方法について解説する。

最後に、シミュレーション研究と数理的研究の接点について議論する。

参考資料を下記URLにて公開予定である。

http://gi.ics.nara-wu.ac.jp/~takasu/research/IBM/ibm.html

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