| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T07-3

植物の概日時計と形態形成制御

溝口 剛 (筑波大・遺伝子実験セ)

植物では、栄養成長から生殖成長期への切り換え(花成)が光周期の制御を受けることが古くから知られている。この光周期依存型の花成制御が、どのように概日時計制御とリンクしているかが、ここ10年の分子遺伝学的研究から明らかにされてきた。主にシロイヌナズナとイネを用いた研究により、概日時計による「GI-CO- FT経路」の制御が、光周期依存型の花成制御の1つのkey stepであることが明らかにされた。特に、FTは永年探し求められてきた花成ホルモン(フロリゲン)の1種として有力視されている。

植物の概日時計機構で、2つの類似したmyb型転写制御因子、LHYとCCA1が重要な機能を果たしている。我々は最近、lhy;cca1二重変異体を連続光条件下(恒明条件下)で栽培すると、逆に花成時期が遅延し、短日型の光周性花成応答を示すことを見いだした。さらに、1)この形質にはELF3、SVP、FLOWERING LOCUS C (FLC)が必要であること、2)LHY-CCA1、CCA1-ELF3、ELF3-SVP、SVP-FLCの間にタンパク質間相互作用が見られることを明らかにした。これらの結果は、概日時計タンパク質LHY/CCA1が、GI-CO-FT経路とは別に、ELF3-SVP/FLC-FT経路の制御を介して光周期依存型花成に関与していることを示している。

恒明条件下でのlhy;cca1二重変異体は、花成遅延形質だけでなく、個体サイズの小型化という変異形質ももつ。この形質は植物のステロイドホルモンであるブラシノステロイドの情報伝達系を介して発現していることを見いだした。「植物の概日時計と形態形成制御」について、最近の知見を中心に議論する。

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