| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
企画集会 T08-1
地球あるいは地域規模での環境変化に対する森林生態系の緩衝機能や恒常性には、生物と非生物間での物質循環が深く関わっていることをいくつかの研究事例をもとに述べる。
大気汚染による多量な酸流入に対する生態系の緩衝機能では、森林植生が土壌から塩基成分を吸収・蓄積し、その結果として林冠面や落葉層の酸中和能力が維持されている。また、土壌から植生への塩基供給や、土壌内での酸中和能力が維持されるためには、根系から土壌への二酸化炭素やプロトン放出が深く関係している。このような根系をインターフェースとした植生と土壌間での物質循環は、微生物による物質代謝とも連動して、酸に対する緩衝機能のみならず大気二酸化炭素や大気窒素沈着の土壌内蓄積プロセスとも密接に関連している。したがって、環境変動下での森林生態系の恒常性を理解するためには、その生態系のおかれた立地条件を考慮に入れ、生物と非生物をめぐる炭素と養分動態の相互作用系を明らかにすることが必要であろう。