| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T08-2

生態学と地球科学との接点―陸上生物による生物圏へのグレイトフィードバ ックの可能性を探る

*赤木 右(九大・理・地球惑星)

生物圏を擁する地球表層では、物質循環は陸から始まり、海洋底で終わる。陸を構成する岩石から物質が最初に解放される過程が化学風化反応である。近年、化学風化反応が植物の介在によって著しく促進されることが明らかになった。すなわち、陸上の植物が、生物圏の必要とする栄養元素の循環を左右している。

ところが、地球表層の物質循環についてフィードバック系をなすと期待される陸上植物というパーツの応答はまだ未解明のままである。また、そのようなパーツを持つ系の全体としての振る舞いについても、理論的な研究がない。

本講演では、1) 植物が促進する風化速度について演者が行った研究結果をまとめ、植物と地球表層の物質循環との関わりを考察し、2) 環境条件に影響する種が存在する系の特徴について述べ、陸上植物によるグレイトフィードバックの可能性を考察した。

1) 植物が促進する風化速度

以下の三つの研究を行った。

1. 植物による風化速度の増加

2. 植物風化が生理的現象であることの証明

3. 植生と風化速度との関係

その結果、植物は次のような興味深い応答を示していることが分かった。

不毛な土地ほど風化速度を増加することができる可能性がある。また、その能力には種間差が存在すること。さらに、種の選択を通して、温暖な時ほど、風化速度を増加することができる可能性があること。

2) 環境条件に影響する種が存在する系の特徴

演者らは、生物圏の環境条件に影響を与える種の選択について、法則を探ってきた。それによると、生物圏の何らかの環境条件に影響を与える生物は選択され、系が安定化されることが明らかになった。

以上、フィードバックのキーパーツの理解とシステムの応答に関する法則から、陸上植物によるグレイトフィードバックは地球史を通じて、地球科学的に重要な役割を演じて来た可能性があると考えられる。

日本生態学会