| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
企画集会 T09-4
共同発表者:藤田剛,鈴木牧(東大・農),浅田正彦,落合啓二(千葉県博),宮下直(東大・農)
大型草食獣や外来種の個体群は,全国各地で個体数を増加し分布域を拡大させている.そのために,能率的な駆除・管理戦略が求められている.将来の個体群分布を予測し少ない労力で効率的な管理を行うためには,空間を明示して個体群動態をモデリングする,空間明示モデルが有効であるとされている.しかし,動物の移動分散という行動は野外で観察しにくいため,パラメータ推定が難しかった.
そこで,本研究では過去30年間分布を拡大させてきた,房総半島のニホンジカ(Cervus nippon)の孤立個体群を対象に空間明示モデルを構築し,ベイジアン・カリブレーションを行うことによって,分布の変遷から間接的に移動分散パラメータを推定した.
房総半島を60*40個の1km四方のセルで表現し,1ステップ=1年として各セル内でのシカ個体数の増減を計算した.計算には野外データにもとづいて定めた妊娠・死亡パラメータをもちいた.移動分散のパラメータとしては,セルからの移出率と移出後,到着セルまでランダムウォークで移動する距離の2つを設定した.カリブレーションの比較対象として,糞カウントから空間補間によって推定された1999年から2001年までの分布データをもちいた.
移出率と移動距離を変化させてシミュレーションを行い,実際の個体数分布と比較して尤度を算出することで,より尤度の高いパラメータを選択してゆくマルコフ連鎖モンテカルロ法によって計算を行い,信頼性の高いパラメータ値を推定することができた.