| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T11-2

亜高山帯の標高傾度に沿ったアカエゾマツ林冠木の成長履歴

*甲山隆司・長谷川成明(北大・地球環境)

低温・短い成育期間・積雪・山頂効果などに制約される亜高山帯林は、環境変化に脆弱な生態系である可能性がある。私たちは、雄阿寒岳の標高傾度(500, 800, 1100 m )に沿ったアカエゾマツ個体群の年輪解析を行い、気候変化が亜高山帯林に与える影響を分析した。各地点で林冠木100 個体をランダムに選定し、デジタル・マイクロプローブ(DmP)を用いて年輪調査を行い、過去 40-150 年の直径成長の履歴を得た。そのうち過去 40 年分を今回の解析の対象とした。

直径成長量は標高 500 m, 1100 m, 800 m の順に大きく、単純に標高傾度に沿って成長量が減少しているわけではなかった。ある年の成長量を、当年と前年の気温(夏季・冬季)、降水量(夏季・冬季)、個体サイズ(胸高直径)、標高、およびその他の個体間差がどのように説明するかを、GLMM と AIC に基づくモデル選択によって解析した結果、温度と個体サイズは成長を抑制し、降水量は促進する効果を示すことが判った。高標高では、当年より前年の温度の影響が大きい、など、標高間での差も認められた。

これらの結果から、雄阿寒岳のアカエゾマツ個体群では気温の上昇は生理的乾燥を招き、生産量の低下をもたらしており、進行する温暖化に対しとりわけ脆弱なシステムである、と考察している。

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