| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T11-3

湿原植物群集内における資源獲得競争とその環境応答

*彦坂幸毅・神山 千穂・及川真平・長田典之(東北大・生命科学)・久保拓也(北大・地球環境)

高山植物を鉢植えにし、気温が高い低地で育ててもすぐに死んでしまうわけではない。しかし野外では数度の気温の違いが植生を大きく変えてしまう。気温と植物の分布の関係を知る上で、植物種間の相互作用の理解は重要であると考えられる。我々は青森県八甲田山系の異なる標高に成立する湿原植物群集を対象とし、種間の資源獲得競争に着目している。植物の生産を資源獲得速度と獲得資源量あたりの生産量(資源利用効率)の積と考え、植物が異なる標高でどれだけ資源を獲得し、それをどれだけの効率で生産に転換しているかを調べた。我々が対象とする湿原では、高標高ほど常緑草本の種数やバイオマスが増えるという特徴が見られた。光獲得量の解析から、常緑種は夏の瞬間光獲得効率(地上部バイオマスあたりの光獲得量)が落葉種に比べ低いが、春と秋に多くの光を獲得するため、年間光獲得効率は落葉種と同等であることが明らかになった(P3-052参照)。このことから、積雪期間の短縮による生育可能期間の延長が落葉種を利し、常緑種に不利であることが示唆された。窒素獲得・利用の解析から、多くの種の窒素獲得効率が標高上昇とともに低下するのに対し、常緑草本種の効率はあまり低下しないことなどが明らかとなった。これらのデータを統合・発展させ、異なる環境での資源獲得競争のモデル化につなげたい。

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