| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T12-1

安定同位体解析を用いた集水域研究

永田 俊(京大・生態研)

本講演では、流域環境における水・物質循環と生態系の状態を総合的に判定する指標として、各種の安定同位体比を利用するという新しい方法論について議論する。水や栄養物質の安定同位体比には、それらの起源や、変化の履歴が情報として含まれている。一方、生物体を構成する炭素・窒素・硫黄などの安定同位体比には、生息環境や栄養源、あるいは、食物連鎖に関する情報が刻印されている。近年、質量分析技術が長足の進歩を遂げたことで、安定同位体比の分析の高精度化、微量化、高速化、低廉化が飛躍的に進んでいる。このことが、生態系や環境の診断ツールとしての各種安定同位体比の利用に、新たな可能性を付加しつつある。しかし、安定同位体比が有する情報の意味を正確に解読するためには、流域圏における水・物質・生物の安定同位体比の分布則についての理解を、さらに深める必要がある。また、技術的あるいは原理的な制約に起因する情報の多義性や不確実性をふまえたうえで、結果の解釈を慎重に行わなくてはならない。

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