| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T12-3

河川における一酸化二窒素の動態-硝化・脱窒におけるアイソトポマー比を利用して-

*眞壁明子(東工大・総合理工), 木庭啓介(農工大・共科技院)

一酸化二窒素(N2O)は、二酸化炭素、メタンに次ぐ温室効果ガスであり、TAR(IPCC 2001)においては全球収支における陸水起源の一酸化二窒素は見積もられていなかったが、AR4(IPCC 2007)においては、農業廃水や下水などの人為起源物質による窒素負荷が、河川における一酸化二窒素生成を助長することが指摘されている。一酸化二窒素は、自然環境中では微生物による硝化(NH4+→NO2-→NO3-)及び脱窒(NO3-→N2)によって主に生成・消費される。硝化・脱窒は窒素負荷に対する自然浄化機能として非常に重要なプロセスであるが、同時に一酸化二窒素の生成についても評価する必要がある。

一酸化二窒素はN-N-Oという非対称分子構造をとっており、安定同位体比として、窒素全体の同位体比δ15Nbulk、分子内における15Nの偏りをあらわすSP(Site Preference)、酸素同位体比δ18Oの3同位体比を測定することが可能である。δ15Nbulk、δ18Oは、起源物質、反応履歴の情報を保持しており、SPは硝化・脱窒で固有の値を取ることから、プロセス解析に非常に有効なツールであるといえる。

自然河川においては、大気平衡により溶解している一酸化二窒素が主成分であり、大気平衡からの濃度・同位体比のズレから、各サイトにおける硝化・脱窒による一酸化二窒素の生成・消費を見ることができる。本発表では、土地利用が異なる琵琶湖3流入河川(野洲川、安曇川、高時川)、モンゴルの下水流入河川における一酸化二窒素の生成・消費プロセスについて比較し議論する。

日本生態学会