| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T14-1

保全の現場におけるRDB活用の現状と課題

梅原徹

1.RDBに掲載された未記載種の研究,記載の推進と情報普及

未記載の掲載種はすみやかに記載すると共に,特徴などの情報普及を進める必要がある。一部の専門家以外には知りえない情報をもとに掲載された種の保全への対応はむつかしい。

2.RDB掲載種が意味することの理解推進

環境アセスメントの保全水準に「保護上重要な種が損なわれないこと」とされていた時代から,アセス法施行以後,保全の考え方がミティゲーションに変わっても,RDB掲載種にはあいかわらず,個別の保全措置が求められている。

問題なのは,RDB種が指標することの理解不足にある。掲載種がどんな環境,生態系に依存,従属しているか,その環境をどのように保全すればよいかを総合的に考えるべきなのに,いまだに掲載種個別の保全対策しか考えられていないことが多い。RDB掲載種の保全は原則として,生態系の保全の枠組みの中で考えるべきである。

3.効果的な保全措置がとりうる法制度の整備

RDB掲載種の生育環境が事業によって影響を受ける場合,保全措置として移植しかなされていない,というより,なしえないことが多い。環境アセスのほとんどが事業アセスで,RDB掲載種の生育地をミティゲーションとして回避しようにも,現実には不可能な場合が多い。

たとえば高速道路のアセスでは,道路敷にRD種が生育していても,事業アセスの段階では回避のために路線をずらす余地はまずない。移植も,保全のための敷地を道路の用地として確保するための法的根拠がないなど,一般には知られていない規制がある。

また,建設時点では調査や保全のための費用が確保できても,工事が終われば管理は別組織に移行し,しかもモニタリング予算は確保できないという現実を改善するには,関連する法律を見直す必要があるが,これはなかなか難題である。

日本生態学会