| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T14-5

RDB記載種から見た中国山地の小規模湿地

日置佳之(鳥取大)

中国山地には、面積数ha以下の小規模な湿地が点在している。その多くでは、水収支バランスの崩れや流路浸食による地下水位の低下、木本種の侵入、周辺の植林の生長による日照不足などの要因により、湿原植物の衰退が著しい。そのような湿地を湿原植物の生育地として健全な状態に戻すためには、法的な保護措置と適切な自然再生事業の実施が不可欠である。行政が対策をとるための前提となるのは、当該湿地の生物多様性保全上の重要性である。すなわち、国または県版RDB記載種が多く生育している湿地では対策がとられやすいが、県版のRDB記載種が2〜3種程度しかなく、しかもそのランクが低い場合には、なかなか対策がとられない。ところが、当該県のRDBだけでなく「近隣数県のRDBのいずれかに記載されている種がどのくらいあるか」という見方をすると、その数が少なくとも5種程度には達する湿地が多くなる。県単位ではなく中国山地全体として湿地の評価ができるようになれば、多くの湿地ではもっと早く保護措置や自然再生が進み、湿原植物の地域的絶滅が食い止められるのではないだろうか?以上のような観点で、具体的なデータも交えながら、RDBのあり方について考えてみたい。

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