| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T15-1

熱帯地域における森林認証制度の現状と課題

内藤大輔 (京大院・アジアアフリカ研)

森林認証制度は、熱帯林の劣化・減少問題を契機として生まれた制度であり、生態面、社会面、経済面で持続可能な森林管理がなされている森林かどうかを一定の基準に照らして、独立の第三者機関が評価・認定を行うものである。森林認証制度は、世界各地で導入されてきており、認証された森林面積は全世界で推定2億haに及ぶが、熱帯地域の認証面積は全体の8%未満にすぎなく、この現状は憂慮すべき事態である。森林管理協議会(FSC: Forest Stewardship Council)は、環境NGOなどが中核となった国際的な組織で、生態面への配慮を求める厳しい基準を持つとして高い評価を得ている。マレーシアは熱帯地域の中で認証の取得が進んでいる国である。サバ州では林業局がデラマコット森林管理区で1997年から約5万haの森林において認証を取得し、施業を行っている。

サバ州林業局は、伐採による土壌流出や種の多様性の減少を軽減するため、低インパクト伐採(RIL: Reduced Impact Logging)を導入している。約3500haの保護区を設定し、生産区においても急傾斜地や河川周辺域の伐採を規制している。またNGOや研究者の協力のもと、オランウータンなどの絶滅危惧種、希少種の生息域の実態調査、モニタリング、保全を行っている。一方で、RILを導入していることから環境影響評価(EIA)が免除されており、管理区全域での影響評価は行われていない。また保護区は急傾斜地や河川周辺域のみが設定されており、野生動物の生息域に基づいて選定されていない。従って希少種などの生息域の実態と伐採による影響を明らかにすることが、より実効的な保全を行う上で重要である。ただし、EIAや希少種に関する調査やモニタリング等の費用は大きく、生産林における実効可能な生物多様性保全のあり方が問われている。

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