| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T15-2

低インパクト伐採による樹木多様性と林分構造への影響

*今井伸夫 (京大・生態研), 清野達之 (筑波大・生命環境)

熱帯林における従来型の択伐施業は、伐採量が多く、林内に縦横に道をつけるため森林へのダメージが非常に大きい。一方、新しい森林管理の手段のひとつとして注目されるRILでは、詳細な事前調査と綿密な道路網や伐採の計画作成の後に伐採が行われるため、森林へのダメージが比較的小さい。伐採に伴う樹木多様性やバイオマスの低下がRIL導入によってどの程度緩和されるのかを明らかにするため、原生林、RILが行われた森林、従来型の伐採が行われた森林において伐採影響を調べた。地上部バイオマスは、従来型区で100-250、RIL区で300-400、原生林区で500t/ha程度であった。従来型区は、RIL区や原生林区より樹木の死亡に伴うバイオマスの減少量が大きいために、正味のバイオマス増加量は最も少なかった。樹木多様性は従来型区で低く、RIL区と原生林区で同程度に高かった。RIL区や原生林区はフタバガキ科(木材として有用な優占種群)の相対優占度が高い一方で、Macaranga属(攪乱依存種を多く含む)の優占度は従来型区のほうが高かった。フタバガキ科樹種の択伐は、その更新にも影響を与える可能性がある。実際、原生林区におけるフタバガキ科の稚樹(高さ10cm以上)密度は約10倍、幼樹(DBH1-5cm)密度は約2倍従来型区よりも高く、フタバガキ科の優占度が高いRIL区でも(調査予定)稚幼樹密度は高いと思われた。熱帯林での従来型択伐は、伐採後森林を長期間放置すれば有用種の稚樹が自然に更新しバイオマスも回復する事が前提で行われてきた。しかし、従来の無計画な択伐ではそれが達成されるのは難しく、木材生産と生物多様性の持続的な維持にはRILのような新たな手法の導入が有効であることが示唆された。

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