| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T17-1

環境保全の便益:環境評価は何をどこまで明らかにすることができるか?

三谷羊平(早稲田大・経済)

なぜ多大な費用を費やして環境を保全する必要があるのか?本報告では、環境保全の便益を明らかにすることでその経済的な理由付けを行う。特に、自然再生を事例として、生態学的な評価に基づいた経済的評価がいかにして行われるか、及び、最新のアプローチを用いることで何をどこまで明らかにすることができるのかを簡潔に紹介することを目的とする。

第一に人々にとっての環境保全の便益を貨幣尺度で客観的に評価することを可能にする経済学的な手法(環境評価)を紹介する。第二に、釧路湿原達古武沼における自然再生を事例として、経済的評価の全体的な手順を具体的に紹介することで、どのように自然科学的な評価に基づいた評価が行われるのかを示す。第三に、最新の評価手法及び分析手法を用いることで何をどこまで明らかにすることができるのかを紹介する。特に、自然再生にかかわる生態学者や政策担当者に有用と考えられる以下の三点を扱う。1)評価軸間のトレードオフ情報(自然科学的な評価軸や社会経済的な評価軸は概して多属性になるが、その多属性間のトレードオフを明らかにできる。);2)再生水準への示唆(自然再生ではどこまで再生するのかという再生水準がしばしば議論になる。環境評価は、どこまで再生することが費用便益の観点から最適であるかを示すことができる。);3)選好の多様性の把握と合意形成への示唆(環境保全の便益はしばしば個人やグループによって異なり、その合意形成を困難にする。環境評価は、このような環境保全をめぐる好みの多様性を把握し、その原因を明らかにすることができる。)第四に、環境評価の課題を論じることで、環境保全に関わる生態学者、政策担当者、及び経済学者の協力がいかにあるべきかを提示したい。

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