| 要旨トップ | | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨 |
企画集会 T17-3
多くの環境問題に共通してみられる,(i)環境保護に協力するためにはコストが掛かり,各個人にとっては協力しない方が得になる,(ii)しかし一方で,全員が協力することで良好な環境が保たれ社会全体の利益は最大化される,といった状況は「公共財ゲーム」として定式化される.この公共財ゲームにおいて,「実際の人間がどのように行動するのか?」,「どのような制度を設計すれば,人々の自発的な協力を引き出せるのか?」といったトピックが経済学,心理学等の分野で近年盛んに議論されている.
公共財ゲームにおける人間の行動に関しては,数十年間の実験研究の蓄積により様々なことが分かってきている.また,21世紀に入ってからは,機能的磁気共鳴イメージング装置(fMRI)などを用いて被験者の行動だけではなく,その背後にある脳情報処理や動機をも明らかにしようという試みも広がっている.本発表では,「公共財ゲームで実際の人間がどのように行動するのか?」についての近年の研究成果を紹介する.具体的には,(1)同調性:他人が協力していると協力しやすい,(2)利他的効用:自分だけ非協力を貫くよりも相互協力を好む(金銭的には損になるにも関わらず),(3)不公平回避:他人との不公平を嫌う,(4)利他的罰:自分が損を被っても非協力者に罰を与える,(5)動機の重要性:行動だけではなくその動機を問題にする,などを紹介したい。最後に,これらの研究が環境問題の解決に与える示唆とその限界についても議論したい.