| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T17-4

湖の水質汚染と人々の協力モデル:生態系ダイナミクスと社会経済学的選択ダイナミクスのカップリングの例として

*大野(鈴木)ゆかり(九大・理), 巌佐庸(九大・理)

生態学と社会経済学を融合するための例として、人々の社会経済学的選択のダイナミクスと湖の水質汚染のダイナミクスをカップリングしたモデルについて発表する。人々の社会経済学的選択のダイナミクスでは、多くのプレイヤーが、経済的なコストのかからない、環境保護に協力しない選択肢か、経済的なコストのかかる、環境保護に協力する選択肢かどちらかを選ぶ。この選択には、経済的コストの他に、心理的コストである社会的圧力が影響する。社会的圧力とは、人々が協力的な選択肢を選ぶように働く圧力で、実験経済学の結果を参考に設定している。社会的圧力は同調性や汚染への関心から構成されていて、多くのプレイヤーが協力する場合(同調性)や、湖の汚染レベルが高い場合(汚染への関心)に強くなると設定した。

この人々の社会経済学的選択のダイナミクスを、湖の水質汚染のダイナミクスと組み合わせることで、どのような社会的要因(経済的コスト・同調性・汚染への関心度合い)を変化させると湖の汚染が抑制できるのか、議論することができる。そのため、人々の社会経済学的選択のダイナミクスに影響する要因を社会経済学の研究者が研究し、環境汚染のダイナミクスに影響する要因を生態学者が研究することで、環境保全について包括的に議論できると考える。

日本生態学会