| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T18-2

数値モデルとメタ分析 - 地域からグローバルスケールへの展開

加藤 知道(地球フロンティア)

地球温暖化などの気候変化のメカニズムを理解するためには、主要な温室効果ガスであるCO2の地域的・グローバルな炭素循環を、定量的に把握する必要がある。一方で、その地球の炭素循環の把握において、陸域生態系の挙動は、最大の不確定要素であるとされている。そのため、最近10年間ほどで、微気象学的方法である渦相関法を利用した世界的観測網が急速に整備されてきており、大気-陸域生態系間のCO2交換量を正確に調べる努力がなされている。さらに、それら地上観測だけではなしえない、グローバルな炭素循環の推定を行うため、多くの陸域生態系シミュレーションモデルが開発されてきており、それらを用いて、全球炭素循環の、過去の再現や、将来の予測が行われている。

筆者は現在、東アジアの炭素収支の現状を調べるため、渦相関法による地上観測データの誌上での収集を行っており、その空間的な分布の把握と、制御要因を解明するために、初歩的な統合解析(メタ分析)を行っている。さらに、グローバルな炭素循環と気候の関係を明らかにするために、陸域生態系炭素循環モデルSim-CYCLEと大気大循環モデルAGCMを結合させた数値計算モデルを開発しており、気候―陸域生態系間の相互作用について、コンピューターシミュレーションを用いて調べている。

本集会ではまず、これらメタ分析と数値計算モデルによって分かった、地域からグローバルな空間スケールの陸域炭素循環について簡単に紹介する。そして、参加者の皆さんと一緒に、手法間で生じる炭素収支の違いの原因や、それらを解消するための観測手法やモデル構造の改善について検討して行きたいと考えている。

日本生態学会