| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T20-1

農村生態系を再生するためのキーハビタットと指標種の抽出

三橋弘宗(兵庫県人博)

農村生態系の保全計画を立てるには、対象種や指標種を設定して、対策を講じるべき場所を選定することが必要となる。コウノトリでもタガメでも、「どこで何をすべきか」を決めなくては、実際の自然再生には繋がらない。保全計画とは、本質的に空間の問題であり、地図として表現することが不可欠である。単純に、目標種の分布情報から、その周辺で農薬を控えるといったやり方ではなく、個体群の存続や生態系機能、物質循環の持続可能性を含めた広域的な評価が求められる。しかし、広域的かつ詳細に生物群集を調査することや物質収支の定量は不可能であるため、ある生態機能の健全性を代替する生物指標やハビタット指標を設けることが現実的である。特に、希少生物が特異的に集中する地域では、生態機能と密接に関連する「キーハビタット(群)」が存在することが多い。今回の講演では、1)簡便な指標種の選定方法、2)指標種とキーハビタットとの関係性について、ワレモコウ、小型サンショウウオ、タガメ、コウノトリ等の具体的な事例をもとに紹介する。また、この企画集会で問われている論点について、私の視点は以下のとおりである。

論点1)群集生態学の知見から :群集パラメーター(例えば種多様性)やアンブレラ種の分布は、単なるヒントであり、その数字や分布を支える生息環境特性との対応関係から生息場所となる空間ユニット(キーハビタット)を特定すべきである。

論点2)農村依存種について :農村依存種には、必ず本来的に利用してきた立地条件があり、農地はその代替地となっている場合が多い。本来の分布条件や農地を代替生息場としている理由を把握すべき。

論点3)農村振興と自然再生 :スター性のある種を選定することは、コマーシャル力において有意義であるが、本質的に生態系機能を回復する上で有意義かどうかは別問題。ただ、マニアックな生物では普及は困難である。

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