| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G2-01

インドネシア西カリマンタン州の文化的景観の創出

*中越信和,Karuniawan Puji Wicaksono(広島大・国際研),Hadi Susilo Arifin(ボゴール農科大)

インドネシア西カリマンタン州は赤道直下に位置する熱帯の平坦な州である。州の大半はカプアス川の流域に含まれ、その原植生は熱帯湿地林が主とする。しかし、広い範囲で開発が進み、森林は、農地、薮、二次林などになっている。移民によって形成された農村の景観は、景観機能から評価して十分な働きをしていそうにない。一方日本政府は「里山イニシアティブ」を閣議決定し(2007)、里地里山景観を発展途上国での持続可能な景観モデルとして、その創出を働きかけている。当州において、2006-08年の間、野外調査等を行い持続可能な里山のポテンシャルを検討した。結論、東アジアの里地里山景観は極少なく、また里山と同義の森林も見出せなかった。そこで、当州で農家の多くが導入に興味を示した、果樹園的林地Tembawangを伴う農村景観についてサンプル調査し、文化的景観の今後の発展の可能性を検討した。Tembawangでは熱帯果実であるドリアン、マンゴー、コーヒーなどを異なる齢構成で植栽し、収穫を分散させている。多くの場合、農家と耕地に続くいわゆるジャングルの手前に位置している。さらに果樹の陽樹的傾向から、その林地での穀物・野菜栽培も可能であると判断された。以上から、Tembawangを含む農業景観を当地域の将来の文化的景観の一つとして提案したい。

本研究は、文科省科研「インドネシア西カリマンタン州カプアス川流域の開発に対する環境影響調査」(代表:山下隆男)及び科学技術振興調整費「低炭素社会を設計する国際環境リーダー育成プログラム」(代表:藤原章正)の研究成果の一部である。


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