| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G2-04

地形スケールでの不連続植生分布パターンに関する理論と実証-モンゴルの森林草原移行帯を例として

石井励一郎(地球フロンティア),藤田昇(京都大・生態研),鈴木力英(地球フロンティア),和田英太郎(地球フロンティア)

大陸規模で見る大きな空間スケールでの植生の空間分布は、気温、降水量など気候条件で説明される(バイオーム)が、見るスケールを小さくしていくと植生は地形や他個体との相互作用の影響を受け、さまざまな分布パターンを示す。中央アジア広域にみられる斜面方位・標高に対応した森林-草原の不連続な分布もその一例であると考えられ、この現象は斜面方位に対応した水分条件から説明されてきたが、その不連続性がどのように成立し、維持されているかについては未解明の部分が大きい。

本研究では、木本と草本の2種類の生活型の植物のバイオマスと土壌水分についてのダイナミックスを数理モデル化し、その定常状態の降水量変化に対する変化を解析した。その結果、植物間での土壌水分に関する促進作用と競争作用によって森林と草原が双安定となる降水量域がありうることがわかった。これは降水量の減少がカタストロフィックな森林の草原化をもたらす可能性を示すと同時に、気候の変動に対する応答履歴効果が今日の不連続パターンを示す原因となりうることを示唆するものである。

このモデルを元にモンゴル北部をサンプルサイトとした定量化モデリングを開始した。植生のパラメーターと気象条件データについては代表地点での連続観測を、また植生の分布、地形の広域情報を得るためには高解像度衛星画像データの解析を行った。3秒メッシュのDEM(SRTM)を用いて斜面スケールでの可能蒸発量を求め、LANDSATの画像解析による森林・草原の分布との対応から、この地域での斜面スケールでの植生決定要因を推定する手法と、観測データの取り込み手法について報告する。本発表では主にモンゴル北部での結果を紹介するが、全陸域への応用への展望についても議論する。


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