| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G2-07

屋上薄層緑化の試み 

*新穂千賀子,大上兵真,樫原美香,大田恵理,長田英美,尾関由衣,入端隆二(兵庫県立大)

近年、都市のヒートアイランド現象等の環境対策として、建築物の壁面緑化や屋上緑化の効果が期待され、行政によって推進されるようになってきた。私達は、2002年から7年間、兵庫県姫路市にある兵庫県立大学環境人間学部B棟屋上で、数社の企業と共同で薄層屋上緑化の実験を行なってきたので、その結果を報告をする。

実験場所は市街地の昭和37年竣工の鉄筋コンクリート5階建校舎の屋上である。

建物の負荷の軽減のため軽量土壌を用い、土厚は10〜2センチと薄くし、土厚の違いと発育の比較を行なった。また、潅水の方法は、潅水無しで雨水のみ、チューブを用いた点滴潅水のみ(1日30分間1回、酷暑期のみ朝夕の2回)、人手による潅水の3方法で行なった。屋上の気温、スラブ面や土壌表面、土中等の温度や湿度をデーターロガーで

記録した。様々な植物を用い屋上の厳しい環境に耐えられる植物の選抜を試みたが強風と直射日光にさらされた夏期の酷暑、乾燥は、天水のみで全くの潅水なしでは、多肉植物のセダムを除いてほとんどの植物は枯れてしまった。キャンパス周辺の植生を利用して作ったチガヤ群落は、点滴灌漑装置を設置ただけで、全く手入れしないまま毎年緑を更新した。屋上緑化の設置費用を抑え、維持管理の費用と労力を軽減し、屋上の緑を保ち続ける方法を模索してきたが、芝は雑草が生えやすく、美しい状態を維持するには手のかかる一面を持っており、実験地の芝地は、6〜7年経過すると野草に覆われてしまった。このことから、先ず芝による緑化からスタートして数年後、様々な雑草が侵入してくる段階で、野草地に遷移していくのを容認するか、芝地の維持に労力を払うかの選択をする必要がある。屋上緑化にも植物遷移の発想が必要になってきているのかもしれない。


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