| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I1-03

マレーシア・低地熱帯雨林における樹木の肥大成長と環境要因の関係性

*坂口麻理(高知大・農),市栄智明(高知大・農),中川弥智子(名古屋大・農),酒井章子(地球研)

一年を通して温暖で降水量の多い熱帯雨林の環境において、樹木はどのように成長を行っているのだろうか。近年の研究により、東南アジア熱帯雨林の樹木は、実は熱帯雨林で稀に起こる短期間の極端な少雨期間の後に、展葉や繁殖を行っている樹種が多いことが明らかになってきた(Ichie et al. 2004, Sakai et al. 2006)。しかし、熱帯雨林樹木の肥大成長に与える環境要因については、未だ不明な点が多い。本研究では、マレーシア低地熱帯雨林の樹木の肥大成長のパターンと、展葉や繁殖との関連性や、降水量を含めた各種気候要因との関係性について、4年間の継続データを用いて解析した。

調査はマレーシアサラワク州のランビル国立公園で行った。調査地は年間を通じて明確な雨季乾季のない熱帯湿潤気候に属している。同公園内に設置された林冠クレーンシステムやツリータワー・ウォークシステムを用いて、林冠構成種を中心とした28科42属61種の樹木について、展葉や繁殖の状況を2週間に1度記録した。また、それら全個体の幹の胸高部にデンドロメーターを設置し、毎月胸高周囲を記録した。胸高部の高さに板根が発達している樹種については、板根の上にデンドロメーターを設置し、梯子を使って毎月の計測を行った。

その結果、全個体での肥大成長には4年間で2回のピークが見られたが、展葉パターンや雨量などとの関連性は見出せなかった。

発表では、樹種ごとでの肥大成長と各種環境要因の関係性を明らかにし、熱帯雨林樹木の肥大成長に影響を与える要因やその樹種特性について考察を行う。また、展葉や繁殖と肥大成長パターンの関係性について、樹種ごとの考察も行う。


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