| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) K1-06

樹林化が進行中の砂州上の樹木の洪水時の流出の機構について

*村形和也,川嶋崇之,浅枝隆(埼玉大院・理工)武田英祐,坂本健太郎(建設技術研究所)

近年の河道内の砂州上の樹林化の原因はダム建設等による洪水の規模や頻度の減少と考えられている。本研究では砂州上の樹木の流失機構を明らかにするため、荒川中流域、埼玉県熊谷市の樹林化が進行中の砂州おいて2007年9月の大洪水前後に樹木の分布調査を行い、洪水による砂州上の樹木の流失状況の把握をした。樹木分布調査の結果から樹木の大半はハリエンジュ(26.3%)、ヤナギ類(45.0%)、ネムノキ(9.4%)が優占していたため、以上の三種類の樹木を調査対象とした。砂州は洪水によって、3m程度の深さにまで冠水し、砂州の上流部の約1/3で表面が1~1.5m程度流失した。樹木の残存状況に関しては、湛水深が大きく砂州表面の洗掘が小さかった場所では多くの樹木が残存したものの、砂州表面の洗掘の激しいところでは多くの樹木が流失していた。その結果、樹木の流失率と湛水深との間には大きな相関がみられなかったが、砂州表面の洗掘深との間には顕著な正の相関が得られることがわかった。また、樹木ごとの流失率と洗掘深の関係を比較すると、ハリエンジュの場合には30cm程度の洗掘で50%程度の流失があるのに対し、ヤナギ類が50%流失するには、砂州の表面が80cm程度流失することが必要であった。樹木の根のサンプリング調査の結果から、流失時の洗掘深はそれぞれ根の最大深さの約1/3程度に相当する深さであった。次に洪水による樹木の傾きを調べると、ヤナギ類の場合、湛水深が60cm程度でほとんどの樹木が50度以上傾いていたのに対し、ハリエンジュの場合には50度傾いていたのは湛水深が90cm程度の場所に生育していたものであった。この結果から、湛水深より洗掘深の方が樹木の流失率の相関が高い原因は、洪水の掃流力受けて樹木自体が屈曲して洪水流に対する抵抗が弱まったことが考えられる。


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