| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) K1-07

河川敷の薮化進行と火入れ効果

*佐々木 寧 (埼玉大学大学院)

河川敷の藪化・樹林化が全国的に、かつ急速に進行している中、今後の河川敷環境管理に火入れが有効な抑制手段の一つと考えられる。2007年12月に野火が発生したのを機に、火災が河川敷植生にどのような影響を及ぼしたかを調査した。調査場所は荒川下流26km付近(東京都板橋区)と6.5km(東京都葛飾区)で、管理上は大規模自然地や公園の一部で、小規模な池部分とオギ原、ヤナギ林、クズなどのツル植物群落が見られる。調査は主に若いタチヤナギ林で、最大樹高12m程である。このタチヤナギ林を含め一帯が焼失した。燃焼時、炎の通過時には地上で300度Cを超えるが、地下ではほとんど温度変化はないとされる。火災の影響を「完枯」、「一部枯」、および樹木全体が焼けた後に「枝萌芽」、「根際萌芽」した4つのタイプに分類し調査した。結果は樹高6m(胸高直径10cm)以下のヤナギは「完枯」となり、6m以上のヤナギは一部枯となった。また、火災後に萌芽したヤナギを見ると6m以下(胸高直径10〜15cm)のヤナギは根萌芽となり、3m以上のヤナギの多くは枝萌芽している。根際萌芽があることから、6m以下のヤナギでも,結果的には75%は生存していたことになる。周辺のオギ原は、翌春のまったく影響なく、むしろ旺盛に再生した。一方ツル植物のクズは、地上匍匐蔓が火災で焼け芽吹きはないが、地下根塊からの芽吹きは影響なく行われ、夏までに地表を被いつくした。種子で越冬するアレチウリ、根茎で越冬するキクイモもほとんど影響を受けず再生した。河川敷の樹林化を効果的に抑制するためには、樹木が肥大する前に、渡良瀬遊水池の例のように定期的に火入れすることが必要となる。藪化の主役であるツル植物や大型帰化植物の対策は、単発の火入れでは抑制は困難である。


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