| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) L1-05

ヌートリアが引き起した池生態系の攪乱と捕獲の効果

森生枝(岡山県自然保護センター)

ヌートリアMyocastor coypusは,南米原産の半水生齧歯類であり,これまで植物の根や地下茎などを主食とすることが知られている.ヌートリアは,岡山県自然保護センターの野外施設(約100ha)においても,開所した1991年から,池を中心にして定着していることが確認されている.開所以降の観察によれば,当初マコモやミクリが特に食害を受けたことから,ヌートリアは水辺や水中に生育する植物の根茎を主な食糧としていたと考えられる.その後,ヒシやドブガイの生育・生息にも影響を与えるようになった.

ヌートリアはヒシの種子を1994年秋期の池干しを契機に食物として利用するようになり,池面(面積約1.4ha)の半分近くを被っていたヒシは激減したが,2003年に実施したヌートリア捕獲後はしだいに元の状態にまで回復してきた.また,最近では水位が低下した池岸で底生動物であるドブガイが相当数捕食されていることも明らかとなるなど,ヌートリアは植物の根茎だけでなく種子や動物をも食糧としていることが明らかになった.

捕獲については,2003年から2008年までに,巣穴が集中する池(周囲約530m,面積約1.4ha)を中心として,箱わなを用いて,53頭のヌートリアを除去した.この間の捕獲努力量は2073わな日であった.2006年(捕獲開始後4年目)には,03年の捕獲開始以降初めて幼獣の捕獲数がゼロとなった.それに伴い,マコモなど多年生植物の生育面積も増加し,捕獲開始後5年目にはドブガイ個体数にも回復の兆しが現れた.なお,捕獲は2003年から2005年までは鳥獣保護法に基づく有害鳥獣捕獲として,2006年以降は外来生物法に基づく防除として行った.

キーワード:植生,ため池,ヌートリア野生化個体,捕獲,捕食,モニタリング.


日本生態学会