| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) L1-07

小笠原諸島におけるグリーンアノールの産卵特性

*戸田光彦,中川直美,鋤柄直純(自然環境研究センター),小松謙之(シーアイシー)

本種は侵略的な外来爬虫類で、捕食によって在来昆虫の著しい減少をもたらしていることから特定外来生物に指定されている。本種の防除において、卵及び産卵前後の雌個体を捕獲することは有効と考えられるが、本種の一腹卵数は1であり、野外でまとまった数の卵が発見されることはなく、小笠原における産卵環境の報告はほとんど存在しない。このため、本研究では産卵場所特性の把握を試みた。

小笠原における野外の産卵場所に関する観察例をまとめたところ、倒木の下、ビロウ落葉の隙間、シダの葉の隙間、多年生草本の叢内が確認された。いずれも卵自体は物陰に覆われて外から見えない状態であり、かつ地表にごく近いところであった。

次に、産卵場所の選択性を把握するため、室内において以下の予備的実験を実施した。2008年4月に父島で採集された雌10個体を幅2m、高さ2m、奥行4mの室内ケージで飼育し、産卵場所となりうる物(乾燥ヤシガラ入植木鉢、湿潤ヤシガラ入植木鉢、オオタニワタリ鉢植、人工植物鉢植、穴あきブロック)を設置し、約2週間おきに産卵状況を確認した。穴あきブロック以外の物は地表及び地上高1mの場所にセットで設置した。産卵は5月から確認され、9月下旬までに計128個(1雌当たり12.8個)の卵が確認された。産卵場所はオオタニワタリ鉢植が最も多く、次いで湿潤ヤシガラ入植木鉢、穴あきブロックが好まれた。これら以外の物への産卵はほとんどなかった。同じ物の場合、高さ1mの場所よりも地表が好まれた。ヤシガラに産出された卵はほとんどが埋め込まれており、その深さ(ヤシガラ表面から卵の上端まで)は平均16.5mm、最大50mmであった。これより、本種はオオタニワタリ等の植物の根元の湿った地点に卵を浅く埋め込む傾向がうかがえた。今後、卵及び雌の捕獲のために、産卵適地を模したトラップの開発が望まれる。


日本生態学会