| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) L1-08

外来二枚貝コウロエンカワヒバリガイが在来種に及ぼす影響について:人工護岸壁の場合

岩崎敬二(奈良大学教養部)

はじめに:コウロエンカワヒバリガイXenostrobus securis(以下コウロエンと略す)は、オーストラリアとニュージーランド原産の汽水性イガイ科二枚貝である。日本や南米等に人為的に移入され、日本では1972年の初発見以降、太平洋側と瀬戸内海の内湾河口部に分布を広げつつある。汽水域の潮間帯下部と潮下帯の礫・石・コンクリート等の硬い基質に固着し、場所によっては基質の全面を被いつくすほど優占するため、日本生態学会によって侵略的外来種ワースト100に選定されている。しかし、本種が在来種に及ぼす影響を実験的に検証した例は国内外で全くない。この発表では、本種の除去実験等の結果を報告し、在来種ドロフジツボが優占する汽水域群集への影響を考察する。

調査場所と方法:和歌山市を流れる紀ノ川下流部の垂直コンクリート護岸壁の潮間帯中部(ドロフジツボ優占)と下部(コウロエン優占)と最下部(コウロエン優占)で、2006年から2008年にかけて、以下のような処理(20cm×20cmの固定方形区を処理ごとに4個設置)を施した剥離・除去実験を行って被度等を計測。A) 処理A区:実験開始時の1回のみ全ての固着生物を隔離。B) 処理B区:実験開始時から毎月(1ヶ月おき)に基質上の全ての固着生物を剥離。C) 無処理区:一切処理を施さない対象区。

結果と考察:1)潮間帯中部の処理A区と無処理区では周年ドロフジツボが優占し、コウロエンは出現せず。2)潮間帯下部と最下部の処理A区と無処理区では、コウロエンが秋冬春に優占するも、夏期には寿命を終えた個体の脱落等により被度が減少し、裸地空間にドロフジツボが着底・成長。しかし秋にはその殻の間にコウロエンが着底・成長し、再びコウロエン優占となった。処理B区の結果も踏まえると、潮間帯下部では、コウロエンが在来種ドロフジツボを被覆して成熟前に死滅させていることが推察された。


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