| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) M2-01

ハイガシラゴウシュウマルハシにおける手伝い行動の性差

*江口和洋(九大院・理・生物),山口典之(東大院・農学生命),上田恵介(立教大・理・生命理学),西海功(国立科学博物館),高木昌興(大阪市大・理)

オーストラリアに生息するハイガシラゴウシュウマルハシは,両性ともヘルパーとなり,ヘルパーのいないつがいでは極端に繁殖成功が低下し,群れの維持も困難となる絶対的協同繁殖種である.これまでの演者らの研究により,ヘルパーの手助けは必ずしも繁殖成功の向上には結びつかず,手伝い行動がヘルパーにとっての間接的利益ではなく,なんらかの直接的利益をもたらしていることが示唆されている.今回,ヘルパーの手伝い行動の直接的利益に注目して,手伝い行動の性差,個体差について発表する.

繁殖巣での手伝いは,抱卵を除く,造巣とヒナへの給餌に見られたが,個体当たりの貢献割合は繁殖個体よりも低かった.造巣へのヘルパーの貢献はオスがメスより高かったが、ヒナへの給餌(育雛期後半)ではメスがオスより高かった.若いヘルパーは老齢ヘルパーに比べて造巣,給餌とも貢献度は低かった.群れ間移動のため,高齢のヘルパーほど巣内ヒナとの血縁度は低くなるが,オスよりもメスの方で非血縁のヘルパーが多く見られた。2歳以上のメスのヘルパーにおいては,血縁が遠いほど給餌貢献度が高かった.メスは所属群に留まるよりも移動した方が繁殖地位の獲得が早く,オスは逆に留まるほど早かった.さらに,ヘルパーメスが繁殖する同一巣産卵が見られた.このような繁殖機会獲得の違いが手伝い貢献パターンに反映していると考えられる.オスは留まることに利益があり,手伝いはそのための手数料的性格を持ち,メスの場合は分散することに利益があり,ヘルパー時の養育経験は分散先での繁殖に有利となろう.また,非血縁ヘルパーも繁殖の可能性があり,その場合ヒナへの給餌頻度も高くなると考えられる.


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