| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) N1-01

スーパーコロニーを形成する在来種、エゾアカヤマアリの寛容な巣仲間識別:体表炭化水素に対する感覚子の応答と攻撃行動 

*小林(城所) 碧(神戸大・理), 東 正剛(北大・環境科学), 尾崎 まみこ(神戸大・理)

多くのアリ種では、同巣、異巣個体を識別し、異巣個体を攻撃的に排除する。巣仲間識別の鍵は巣毎に異なる体表炭化水素(CHCs)の組成比であると考えられており、クロオオアリを用いた先行研究から、触角上に存在するCHCs感受性感覚子によって巣仲間識別を行っていると明らかになっている。しかし、数種のアリは、同種の異巣個体が攻撃を受けずに自由に出入りできる融合性を持ち、複数の巣が融合したスーパーコロニーを形成する。スーパーコロニーは外来性侵入アリ種に多く見られ、その進化や形成のメカニズムについては未だ不明点が多い。

本研究では北海道の石狩市でスーパーコロニーを形成しているエゾアカヤマアリ (Formica yessensis)を用い、融合巣の要因となりうる非攻撃的な巣仲間識別のメカニズムを解明するため、石狩スーパーコロニー(ISC)内4巣とISC外2巣を対象に、ガスクロマトグラフィー分析を用いたCHCs組成比の巣間比較、CHCs感受性感覚子における各巣のCHCsに対する電気生理学的な応答、野外における攻撃性の行動観察、を行った。ガスクロマトグラフィー分析から、CHCs組成比を判別分析にかけると、巣毎でのまとまりを見せた。正判別率はISC内と外の巣間では高い(70%)が、ISC内の巣間では低かった(37.5%)。ISC内の1巣(H巣)由来のCHCs感受性感覚子における、電気生理学的応答は、ISC内よりISC外由来の巣のCHCsに強く、高頻度であった。H巣の個体による他巣個体への攻撃行動(噛み付き)はISC内よりISC外由来の個体に高頻度で見られ、電気生理学的応答と傾向が酷似していた。


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