| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) N1-10

西表島におけるカエル類の年齢と年齢推定法の有効性

*戸金大(明治大・院・農学),福山欣司(慶應大・生物),倉本宣(明治大・農学)

カエル類の年齢推定法の中で骨組織を用いた年齢査定法(スケルトクロノロジー)は信頼性が高く,現在のところ最も有効な手段と考えられている。スケルトクロノロジーによる年齢推定は,活動期と休眠期を交互に繰り返す両生類の性質を利用したもので,休眠による成長の停止が骨に残した痕跡(LAG)を調べることによって年齢を推定する方法である。湿潤な温帯域に属する日本の九州以北では,休眠期は1年に1回の冬眠のみであるため,LAGを数えることによって年齢を査定できる。この性質を利用し,これまで本州などに生息するカエル類の年齢が推定されてきた。一方,両生類が冬眠しないと言われる南西諸島でも,冬季にはカエル類の活動が低下するため,LAGが形成されるという報告がある。しかし,さらに緯度の低い先島諸島においての知見はこれまで報告されてこなかった。そこで,本研究では,先島諸島の西表島に生息する複数のカエル類の骨組織を用い,スケルトクロノロジーによる年齢査定が可能かどうかを検証すること目的とした。

研究には2008年9〜12月に西表島で採取したサキシマヌマガエル,ヤエヤマハラブチガエル,オオハナサキガエル,ヒメアマガエル,リュウキュウカジカガエル,ヤエヤマアオガエルを用いた。カエルの後肢第3指を第2関節まで切り取り,5%ホルマリンで固定しサンプルとした。実験はこれまで報告されているスケルトクロノロジーに準拠し,脱灰処理した指骨を16〜25μmに薄切して検鏡した。まず,骨組織中にLAGが形成されているかどうかを確認し,確認できた場合にはLAGを計数した。本大会では,これらの結果とスケルトクロノロジーの有効性を報告する。


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