| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-002

富士山北斜面における森林限界の動態ー空中写真による最近27年間の変化の解析

芹澤守也(茨城大学大学院 理),山村靖夫(茨城大学 理),安田泰輔(山梨県環境科学研究所)

富士山は比較的新しい火山であり、一次遷移の進行により現在でも森林限界が上昇していると考えられるが、雪崩がしばしば植生を後退させる。富士山の森林限界では、山頂側に頂点をもつ楔形の半島状植生が形成されるため、これを単位として植生動態を解析する事が有効である。本研究では、富士山森林限界の植被面積の変化とその変動要因を明らかにするために、空中写真を用いて大面積で最近27年間の地形や方位による被度の変化の違いを調査した。

調査は、富士山北斜面のスバルラインより上のスコリア基質の地域で行った。調査区域は標高約2300m〜2700mで、裸地と複数の半島状植生をほぼ同じ面積で含み、全体の面積は約146 haだった。1975年と2002年撮影の空中写真を使用し、オルソ化(幾何補正)ののち、全域を5mメッシュで区分し、植被を5段階の被度に分類した。裸地と半島状植生、半島状植生の東側・西側・上部などに区分して植被面積の変化を解析した。

区域内の植被面積は、この27年間で約14%増加し約4%の減少があり、結果として約10%増加した。植被面積は主に林縁部で増加し、全ての半島状植生で面積が増加した。半島状植生に挟まれた地域は、植被面積の高い増加率を示した。また、半島状植生の東側は、山頂方向や西側と比較して植被面積の高い増加率を示した。

今回の調査で、富士山北斜面では森林限界がこの27年間で平均約1m/年上昇した事が示された。西からの季節風の影響が植生拡大の抑制要因である事が示唆された。また、植被減少の最大の要因は雪崩による植生破壊であり、他の要因として、裸地における植物へのストレス(強光、乾燥、高温、低温)や、スコリアによる損傷などが考えられる。


日本生態学会