| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-009

火山荒原上の植物分布に対する非在来カラマツと在来ダケカンバの樹冠効果の比較

*斎藤達也(北大・環境),露崎史朗(北大・地球環境)

火山荒原のような大規模攪乱跡地は非在来木本の侵入を頻繁に受ける.乾燥地における木本の侵入は,他植物の空間分布や遷移方向に多大な影響を与える.

非在来木本と在来木本は生育形や生活史がしばしば異なるため,木本下層に形成される環境や他植物の空間分布に対する影響も異なると予測される.また,樹冠を形成する木本植物の成長に伴い下層の光環境は悪化するため,他植物の定着や生育が不良になるだろう.本研究では,渡島駒ケ岳火山荒原上において,樹冠の拡大に伴う非在来木本と在来木本の他植物空間分布に対する影響がどのように異なるかを明らかにすることを目的とした.

様々なサイズの非在来カラマツ(41本,樹高0.24〜9.24m)と在来ダケカンバ(40本,樹高0.15〜7.41m)を選定し,これらの下層とその近傍の裸地に50cm×50cmの方形枠を4つ設置し,その中に出現した維管束植物の被度と密度,地衣類とコケ類の植被率,リター層の被覆率と深さ,光量子密度を記録した.また,各木本植物の樹高,樹冠末端部の高さ,樹冠直径を記録した.

裸地と比較して,樹冠下の種数と植被率は高く,スズメノヤリ,ヒメスゲ,ススキ,カラマツ,シラタマノキなどの定着が確認された.樹高増加に伴い両樹冠下の種数は増加したが,ダケカンバ樹冠下の方がより高い種数を示した.樹高2m以下のカラマツ樹冠下では植物はあまり観察されず,樹高3〜7mの樹冠下ではスズメノヤリやヒメスゲの密度が高かった.樹高の増加と共に相対光量子密度は減少し,リターの被覆率と厚さは増加した.全てのサイズ段階に渡って,ダケカンバ樹冠よりカラマツ樹冠の下層は暗くリター層は厚かった.相対光量子密度の減少と共に種数,スズメノヤリやヒメスゲの密度は減少した.

そのため,樹冠拡大に伴う他植物の定着阻害の効果は,ダケカンバ樹冠下よりもカラマツ樹冠下において強いと予測された.


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