| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-011
北アルプス・後立山連峰の八方尾根は蛇紋岩に被われ、亜高山帯にも関わらず高木種を欠き、草原やハイマツなどの針葉樹低木林が分布している。一般的に蛇紋岩土壌では、(1)高濃度に含まれるMgによるCaの吸収阻害、(2)Ni、Crなど有毒重金属による生育阻害、(3)植物の生育に必須な多量元素(N,P,K,Ca)の欠乏といった化学性が植物の生育を強く阻害することが知られている。しかし、八方尾根では種多様性が高く、多様な植物群落が成立している。その要因としてMg、Niといった有害重金属の影響が地形によって異なるからではないかと考えた。そこで本研究では、八方尾根の標高2000m地点に尾根から一次谷をまでを含むように、150×130mの方形区を設置し、地形に沿って分布する群落間で、表層土壌の理化学性と優占種の植物体中に含まれる元素濃度を比較した。その結果、尾根のクモマミミナグサ群落の土壌は斜面上部のハイマツ群落や斜面下部のキンコウカ群落に比べ、土壌中の粘土の割合と有機物(腐植)堆積量が小さく、CECが低かった。そして、土壌中の可溶性のMgとNi濃度は尾根で高く、優占種のクモマミミナグサは高濃度のMg、Niを蓄積していた。尾根部では土壌発達が悪く、CECが低いにもかかわらず、MgやNiを多量に保持しているために、それらによる生育障害が生じやすく、耐性を有した蛇紋岩固有の植生が成立したのではないかと考えられた。