| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-012

浅間山麓の冷温帯広葉樹林における炭素・窒素量と群落構造の関係

*友常満利(早稲田大・教育),吉竹晋平(早稲田大・院・先進理工), 馬場俊介(早稲田大・教育),坂巻義章(早稲田大・理工総研),小泉博(早稲田大・教育)

近年注目されている温暖化や窒素流出などの環境問題に森林は大きく関与している。これらの問題解決に向けて、炭素・窒素循環システムの研究が盛んに行われるようになった。しかし、多くの場合、林業などの観点からの研究の為、針葉樹の研究例が多く、日本の森林の多くを占める冷温帯広葉樹林についての知見は乏しい。また、地下部に蓄積された炭素(C)・窒素(N)量についての情報も不足している。したがって、本研究では冷温帯広葉樹林の群落構造の解析を行うと共に、特にC・N蓄積量に目を向け、その推定を行うことを目的とした。

調査地は浅間山の南側斜面(長野県北佐久郡軽井沢町追分)に位置し、コナラを優占種とする冷温帯落葉性広葉樹林である。この林分に100m×30mのコドラートを設置し、毎木調査や年輪調査などの群落構造の解析を行い、さらにサイト内の各部(樹木・土壌等)のC・N濃度の分析を行った。

その結果、この林分では30種592本の樹木が確認された。胸高断面積合計の77%をコナラが占め、胸高直径の分布は20cm前後をピークとする山型となり、35年生前後の一斉林型であることがわかった。1haあたりの蓄積量はCが141.6 t、Nが4.09 tと推定された。このうち、C蓄積量は樹木69.9 t、粗大有機物(CWD)1.6 t、土壌70.0 t、N蓄積量は樹木0.23 t、CWD 0.01 t、土壌3.85 tであった。これらの値は、一般的な冷温帯広葉樹林と比べて低い値を示し、特に土壌のC・N蓄積量が少ないことが明らかになった。これは、火山周辺である為、土壌の形成が進んでいないからであると考えられる。さらに、群落構造とC・N蓄積状況の関係についても議論する。


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