| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-013
札幌市藻岩山(531 m)の天然記念物に指定されている北東域の落葉広葉樹林内に,帯状区(30 m×200 m)を設定した.帯状区は,南北方向に走る尾根とその両側の斜面,そして谷を横に切り,田村(1987)が区分した5つの微地形を含んでいた.ここでは,これら微地形と斜面方位を組み合わせ,次の7つの微地形型に区分した;頂部斜面,上部谷壁斜面(東・西),下部谷壁斜面(東・西),谷底面,谷頭斜面.簡易レベル測量から作成した帯状区の等高線図および現地での踏査から,帯状区内の微地形型の分布図を作成した.各微地形型に矩形の調査区を任意に設定し(合計41個),草本層(高さ2 m未満)に出現した維管束植物の種名を記録し,優占度を測定した.また,帯状区内の高さ2 m以上の樹木個体について,種名を記録し,位置と胸高直径を測定した.
41の調査区は,草本層に出現した種の有無からTWINSPANによって2つの群に分けられ,各群は4つおよび2つの下位群に細分された(AIa群・AIb群,AIIa群・AIIb群,BI群・BII群).各群に含まれる調査区の微地形型をみると,AIa群では上部谷壁斜面(東),AIb群では下部谷壁斜面(西),AIIa群では頂部斜面,AIIb群では上部谷壁斜面(西),BI群では谷底面,BII群では谷頭斜面と下部谷壁斜面(東)の占める割合が高かった.樹木個体の分布と微地形型との間の関係を検定した結果,アサダ,ハウチワカエデ,サワシバは西斜面の微地形型に,イタヤカエデ,オヒョウは東斜面の微地形型に偏って分布する傾向が見られた.
これらの結果は,草本層の種組成の変化は微地形と斜面方位の組み合わせで区分された微地形型と密接な関係を示すのに対し,樹木個体分布は斜面方位に強く影響されていることを示している.