| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-015
ワンドは、増水時の網状流路が本川から取り残されてできるすり鉢状の起伏に富んだ地形で、伏流水湧出により、多様な水分環境が維持されている。そのために、ワンドでは他の環境に比べ、複雑な物理環境が存在する。演者らは2008年に河川敷に出現するワンドには、多様な植物種が出現することを明らかにした。本研究では、ワンドとそれ以外の河川敷サイトにおける植物種の分布特性とそれらの成育環境を比較し、河川域において多様な植物種の分布を可能にする物理的環境を明らかにする。
調査地は、新潟県五泉市の早出川中流域である。河道の両岸にある4ヶ所のワンドと、それらの周辺から相観植生の異なる15サイトを選んだ。各サイトには1m×20mの植生調査ベルトを2〜5本、計56本設置し、1ラインにつき1m×1mのコドラート20個を設けた。各コドラートでは、出現した全維管束植物の種名を記録するとともに、表層土壌を採取し、粒径を4区分に分類した。また、各コドラートでレベル測量、高精度GPS標高測量(6地点)を行った。さらに、ワンド内には水位計を設置し水環境を評価した。
その結果、ワンドであっても植物種が多く出現するワンドと少ないワンドが存在した。土壌粒径と種数の関係には有意な相関がみられ、0.425mm以下の細砂やシルトが多いほど出現種数は多くなった。このような植物種多様性を高くする環境特性と植物の生活史特性を関連づけ、河川域において植物種多様性のホットスポットが創出される条件を抽出する。