| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-016
中国雲南省南部の菜陽河地区には,原生状態に近い照葉樹林が保全されているほか,伐採や農地開発による照葉樹林の破壊後に成立したBetula alnoidesの優占するカバノキ科二次林が広く分布している.本研究では,照葉樹林とカバノキ科二次林に生育するシダ植物(地上生,着生)に着目し,その調査・解析を行うことによって,照葉樹林破壊後の種組成・種多様性の動態を明らかにすることを目的とした.
カバノキ科若齢林(10〜20年生),カバノキ科壮齢林(30〜40年生),照葉樹林に100m2の調査区を合計90区設置し,シダ植物を対象とした植生調査を行った(シダ植物の種組成,出現種の被度%を記録).そして,3森林タイプ間で調査区あたりの平均出現種数を比較すると共に,DCAによる調査区の序列化を行った.
地上生シダの平均出現種数はカバノキ科若齢林と照葉樹林で4種前後,カバノキ科壮齢林で約6種であった.着生シダの平均出現種数はいずれのタイプでも4種前後であった.これらから,100m2あたりのシダ植物の種数は,照葉樹林破壊後の40年以内に原生林のレベルまで回復することが示唆された.一方,DCAの結果をみると,森林タイプごとに調査区にゆるいまとまりが認められ,「照葉樹林」,「カバノキ科若齢林・カバノキ科壮齢林」の調査区が比較的明瞭に区分された.これらから,シダ植物の種組成が原生林のレベルまで回復するには40年以上の年数が必要であることが示唆された.