| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-022
北海道日高地方に分布するコナラ自然林および半自然林の種組成の特徴を明らかにするために10の調査区を設定し,植生調査と毎木調査を行った.得られた植生資料に並川(未発表)の植生資料(39調査区)を加え,植物社会学的な表操作を行った.
表操作の結果,コナラ−クマイザサ群落とコナラ−ミヤコザサ群落が区分された.前者の群落の識別種はハウチワカエデ,ナニワズ,オオカメノキ,ツクバネソウなど,後者の識別種はコンロンソウ,カンボク,ヒカゲスゲ,フタリシズカ,アカシデなどであった.両群落の地理分布をみるとコナラ−クマイザサ群落は石狩低地帯の中央部から北に分布していたのに対し,コナラ−ミヤコザサ群落はその南から太平洋岸の日高地方に分布していた.識別種の気候環境傾度による反応特性と地理分布型を文献からみると,コナラ−クマイザサ群落の識別種には温暖で多雨・多雪な環境に分布の中心をもち,北海道全域型の分布を示す種が多くみられた.一方,コナラ−ミヤコザサ群落の識別種には温暖または冷温で寡雨・寡雪な環境に分布の中心をもち,太平洋型の分布を示す種が多くみられた.
日高地方を含む北海道のコナラ林の種組成の特徴を明らかにするため,文献資料に示されたエゾマツ群団,サワシバ−ミズナラ群団,ハルニレ群団,サワグルミ群団,ブナ−チシマザサ群集,イヌシデ−コナラ群団の常在度表を用い,出現パターンが類似する種をまとめて類型化した.コナラ林に出現した種の各類型への出現種数をみると,二つの群落の間に大きな差は認められず,サワシバ−ミズナラ群団,ハルニレ群団,サワグルミ群団に共通して出現するパターンを示す種の割合が高かった.一方,本州で記載されたイヌシデ−コナラ群団に特徴的に出現するパターンを示す種の割合は小さく,組成的に本州のコナラ林に比べ北海道の落葉広葉樹林との関連が強いことが推察された.