| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-024
栃木県芳賀郡茂木町では、戦前からコナラ・クヌギを主構成種とする落葉広葉樹林や谷戸田・谷津田、山間の畑が利用され里山と呼ばれる景観が作られてきた。しかし、生活や従来の農林業の困難さ、賃労働への従事が原因となり、伝統的な里山利用は殆どなされなくなってきた。里山景観は住民生活と密接な繋がりがあるため、里山景観保全について考える上では社会科学の併用が重要とされており、過去の土地利用や地形の影響の包括的な関係の解析が必要である。そこで本研究では、住民生活の場として小集水域内の森林の植生構造が過去の土地利用と地形要因によってどのように規定されているのかを考察する。
住民への聞き取りと航空写真解析によって土地利用・被覆のマッピングを行い、土地利用タイプを1.アカマツ林、2.コナラ林1,2齢級、3.コナラ林3,4齢級、4.コナラ林5,6齢級、5.落葉広葉樹林からヒノキ人工林へ転換した林、6.ヒノキ人工林の6つに区分した。土地利用タイプごと5つ、計30の植生調査プロットを設置し、高木層・中低木層については毎木調査を、草本層については植物社会学的調査を行った。
種組成を基にクラスター解析を行った結果、中低木層と草本層では植生構造は土地利用タイプでは規定されないことがわかった。さらに小集水域内の大部分を占めるコナラ林のみに対してクラスター解析を行った結果、コナラ林ではいずれの階層においても齢級の違いにより植生構造は規定されないことがわかった。CCAの結果、コナラ林草本層種組成は斜面方位、最大傾斜角、小集水域の要(入口)からの距離との相関が見られ、植生構造は過去の土地利用よりも地形条件や集落からの距離によって規定されることが示唆された。