| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-030

モンゴルのステップにおける連続した小雨への潅木と草本の反応

*山田義裕(岡大環境学),廣部宗(岡大環境学),ジャムスラン=ウンダルマ(モンゴル農大),吉川賢(岡大環境学)

背景:

乾燥地の植物の展葉には降雨が必要である。展葉にはある閾値以上の大雨のみが影響し、その閾値は潅木が草本より大きいことが知られている。しかし、過去の研究例は一回の降雨の影響を降雨サイズ別に比較したものである。連続して小雨が降った場合に大雨と同等の効果を持つことが理論的に予測されているが野外での実証例はなく、生活形による反応の違いがあるかも明らかでない。

目的:

連続した小雨の展葉への影響を潅木と草本で比較する。

方法:

遊牧家畜を排除した柵の中で8つの潅木パッチを選び、パッチの内部(潅木測定区)とパッチ縁から北西と南東に1m離れた二地点(草本測定区)で植被率の測定を行った。デジタルカメラを用いて真上から20cm×20cmの区画の写真を撮り、画像処理によって緑のピクセルの数を数えて植被率を算出した。草本測定区については生活形ごとに植被率を算出した。測定は5月から7月まで月に一回、8月のみ大雨前後の二回測定した。7月の測定は連続した小雨の後であり、8月上旬が大雨の前、8月下旬が大雨の後である。

結果:

一年生広葉草本と潅木の植被率は全ての測定地点において7月から8月上旬にかけて減少した後8月下旬に再び上昇し、最も植被率が高かったのは8月下旬であった。一年生広葉草本は8月の上昇がより大きく、潅木は7月の上昇がより大きかった。

多年生単子葉草本の植被率は様々なパターンが見られ、最も植被率が高い時期は区画によって異なった。

この研究でわかったこと:

生活形によって植被率の変化パターンは異なっており、一年草は大雨により強く影響され、潅木は小雨の集中によく反応することが示唆された。ただし1シーズンだけの結果なので、生活形による変化パターンの原因については更に研究が必要であろう。


日本生態学会