| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-045
1970年以降,減反政策や過疎化による労働力不足などにより,各地で放棄水田が増加している.これまでに放棄水田の植生については多くの報告がなされているが,その遷移過程は自然立地条件や,土地の管理履歴などにより異なるため,より多くの事例を蓄積することが必要であると考える.
本研究では,広島県北部の冷温帯域における放棄水田の植生を把握し,その遷移過程の一端を明らかにすることを目的とした.
調査地とした広島県北広島町八幡地区は広島県の北西部に位置する.標高は約760m-800mであり,年平均気温は10℃前後,年間降水量は1,900-2,700mmであり,広島県で最も積雪量の多い地域である.
調査は放棄年数の異なる水田で2005年5月から2006年10月にかけて,耕作地で2008年8月から10月にかけて植生調査を行った.方形区は2×2m2もしくは1×4m2とし,全出現種の被度,群度,草丈を記録した.
調査を行った57スタンドのデータをTWINSPANを用いて解析した結果,乾性な放棄水田,湿性な放棄水田,圃場整備を行っていない放棄水田,耕作地に分類された.また、各スタンドをDCAを用いて序列づけた結果,1軸については乾性なスタンドから湿性なスタンドへと序列づけられた.乾性な放棄水田では,ススキ,ヨモギなどが,湿性な放棄水田では,セリ,ヌマハリイなどが,圃場整備を行っていない放棄水田では,ビッチュウフウロ,マアザミ,ゴウソなどが,耕作地では,オモダカ,コナギ,ホタルイなどが特徴的に出現した.
これらの結果から,放棄水田の植生には,圃場整備の有無が影響していることが示唆された.また,放棄年数よりも土壌水分の違いが影響していると考えられた.