| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-046

管理方法の違いによる三瓶山草原の植生構造

*井上雅仁(三瓶自然館),高橋佳孝,堤道生(近中四農業研究センター)

島根県のほぼ中央に位置する三瓶山麓に残る半自然草原において,管理方法の違いとそれによる植生構造の変化を把握した.調査は東の原,西の原と呼ばれる2箇所の半自然草原で行い,前者は放牧と刈り払いにより,後者は火入れと放牧によって管理されている.調査区は場所と管理を組み合わせ,東の原の「放牧+刈り払い」「放牧+刈り払い短期間放棄」「放牧+刈り払い長期間放棄」「刈り払い」,西の原の「火入れ」,「放牧+刈り払い」の7箇所を設定した.それぞれの相観は,東の原ではシバ草原,シバと低木の混在,灌木林,ススキ草原,西の原ではススキ草原,シバ草原である.各調査区に2m四方の方形区を12個ずつ設置し植生調査を実施した.得られた植生データをTWINSPANで解析し,グループの区分,指標する種群の抽出を行った.あわせて各グループと管理形態との関係について整理した.

植生データはシバの有無により特徴づけられる2つの群に区分された.シバの存在する群はさらに3グループに分割され,それぞれ(1)西の原の「放牧+刈り払い」,(2)東の原の「放牧+刈り払い」,(3)東の原で約5年間刈り払いが行われていない「放牧+刈り払い短期間放棄」に概ね対応した.(1)と(2)(3)はメドハギの有無により,(2)と(3)はワラビの有無により区分された.一方,シバを欠く群は,(4)東の原で約10年間刈り払いが行われていない「放牧+刈り払い長期間放棄」,(5)東の原の「刈り払い」,(6)西の原の「火入れ」に概ね対応した.(4)(5)と(6)はチゴユリの有無により,(4)と(5)はオトコヨモギなどにより区分された.なお(4)では放牧が継続されているものの刈り払いは長期間放棄されており,植生は灌木化した構造を呈している.このことから,放牧のみの管理では草原植生を維持するのが困難なことが示唆された.


日本生態学会