| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) PA1-047
つる植物は、人工林において林木にとりつき生長を妨げるだけでなく、樹幹の変形を引き起こすなど木材生産の障害となる、いわゆるつる被害の原因となる。近年、管理の行き届かない人工林が増加しており、これまで以上につる被害が発生していると予想される。つる被害は林冠閉鎖前の幼齢期、あるいは若齢期に著しいとされ、壮齢林分におけるつる被害を扱った研究は少ない。そこで本研究では、つる被害の著しい57年生の壮齢林分(つる被害区)と、隣接する管理履歴の異なる同齢の林分(対照区)の2林分に跨る調査プロット(0.35ha)で4年間の継続調査を行い、壮齢林分において、つる被害が林分構造に与える影響を明らかにすることを目的とした。
調査は2005〜2008年の10・11月に行った。樹木については、DBH3cm以上の全個体を対象として、種名・DBH・生枯死・根元位置を記録した。つる植物については、DBH1cm以上のものを対象に、種名・直径・登攀している樹木の個体番号・根元位置を記録した。
つる植物のとりついている植栽木は、つる植物のとりついていない植栽木に比べて直径生長量が小さく、枯死率は高かった。つる被害区では枯死する植栽木が多くみられ、調査期間中、各所に小規模な林冠ギャップが生じた。2006年には、植栽木が十数本まとまって植栽木の枯死・倒伏する現象がみられ、大きなギャップが形成された。ギャップ周辺では、その後も植栽木が枯死し、ギャップは拡大する傾向を示した。胸高断面積合計(BA)は、対照区では年々増加したのに対し、つる被害区では減少した。一方、広葉樹は対照区ではほとんど見られなかったのに対し、つる被害区では広葉樹のBAは増加し、新規加入個体もみられた。つる被害は個々の植栽木だけでなく、それらを倒伏させることによってギャップを拡大させることが明らかになった。