| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-073

施肥がアカメガシワの被食防衛戦略に与える影響

山尾僚(岡理院・総情・生地), 片山昇(京大・生態研セ),波田善夫(岡理・総情・生地)

植物の中には、機能の異なる複数の防衛形質をもつ種がみられる。このような植物が、どのような環境でどのような防衛を行うのかを明らかにすることは、植物が多様な防衛戦略を進化させてきた意義を解明することにつながる。アカメガシワは、物理的な障壁である星状毛(トリコーム)や化学防御物質を含有する腺点による直接防御と、花外蜜やPearl body(PB)によって誘引されたアリによる間接防御を行っている。本研究では、土壌養分の違いがアカメガシワの防御形質に与える影響とその防衛効果を調べた。

2007年11月にアカメガシワの実生苗60個体を鉢に植栽し、防虫ネットを被せた網掛け区とコントロールを設置した。3ヶ月間栽培した後に、各株の星状毛と腺点密度、花外蜜腺とPB数を調べ、植物上のアリの個体数を記録した。その後、地上部を刈り取り、乾燥重量を測定した。

網掛け区とコントロール区では、各防御形質に違いはみられなかったが、施肥によって星状毛と腺点密度は低下し、EFN数とPB数は増加した。非施肥区の植物にはほとんどアリがみられなかったのに対し、施肥区の植物には平均15個体以上のアリが訪れていた。これらの結果は、アカメガシワは貧栄養条件下で直接防御を行いアリによる間接防御は行わないこと、さらに土壌の富栄養化にともない、アリによる間接防御へ投資量を増大していることを示す。一方、非施肥区の植物のバイオマスは網掛けによって大きな変化はみられなかったが、施肥区の植物では網掛けによってバイオマスが増加した。このことは、非施肥区の植物では防衛効果が高く、施肥区の植物では防衛効果が弱いことを示す。


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