| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-143

風倒撹乱地における鳥類群集形成の形態学的メカニズム:形態は生息環境を反映するか?

*町田直樹(北大・院・環境科学),村上正志(千葉大・理)

生物群集の構造は環境異質性に影響を受ける.森林性の鳥類群集でも、風倒撹乱や山火事などによって生じる森林ギャップが,多様性や種ごとの個体数に影響を与えると考えられる.このとき,生物は種間で異質な環境をニッチ分割することによって共存し、異質性の高い空間では多様性が高まると予測される.しかし、生物の性質の違いによって,環境異質性に対する反応がどのように異なるかという研究は少ない。生物の形態は、その種の生息環境および生活史と密接な関係を持っており、生物の性質を表す指標として用いられる。さらに,種間の形態の相対値から「形態の多次元空間(morphological space)」を想定することによって,各種の群集内で占める位置(生態的ニッチ)を定めるという方法がある.このような形態を用いた解析は,鳥類の局所的な群集形成やハビタット選択に関わるメカニズムを理解する助けになる可能性があり,環境異質性が鳥類群集に与える影響の検討に用いることができるだろう.

本研究では,台風による風倒撹乱によって生じた森林内の異質性が、鳥類の群集構造とそのニッチ分割に与える影響を、morphological spaceを用いて明らかにすることを目的とした.苫小牧研究林において、2004年に大規模な台風によって生じた森林ギャップの分布を空間異質性として用いる.撹乱規模の異なる調査地点(30カ所)で鳥類を定点観察により調査した。調査地点を中心として,同心円状に10m間隔で半径100mから500mの円を発生させ,その内部の攪乱率を計算した.さらに調査地で観察された全ての鳥類種について,北海道産の標本を用いて形態の計測を行い16部位の代表値を求めた.これらのデータから,風倒撹乱の傾度の変化に対してmorphological spaceによって表される鳥類の群集構造がどのように応答するかについて検討する.


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