| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-150

八ヶ岳山麓におけるキシャヤスデの分布と生息適地の推定

*浅沼弘人,藤巻玲路,岡井尚之,佐藤由依,金子信博(横浜国大・環境情報)

森林生態系は大きな炭素プールを持つことから、その炭素貯蓄量や分解速度等の炭素動態が注目されている。その中で土壌動物は、様々なスケールで土壌環境を改変する役割を担う。

キシャヤスデ(Parafontaria laminata)は日本中部地方において高密度で個体群を形成する事が知られている。1〜6齢は土壌食、7・8齢は落葉と土壌を混食する生活史を持ち、バイオマスが大きくなる成体の時期に、落葉分解の促進や土壌の理化学性の改変を行っていることが示されている。しかしキシャヤスデの分布・密度が広域的な視点で見たスケールでの環境要因との相互作用については分かっていない。

本研究ではキシャヤスデの生息の選好性を解明し、キシャヤスデの在・不在とその密度が環境にどの様な影響を与えるか調べるために、1999-2000年に行われたキシャヤスデの分布調査(伊藤ら,2000)を基に、八ヶ岳南側斜面(野辺山、小淵沢方面)においてキシャヤスデの分布と密度の野外調査を行った。また分布調査と同時に土壌・植生・地形といった環境情報も計測した。

調査の結果、キシャヤスデは900m〜1890mの標高に生息しており、過去に生息が確認できた9地点中7地点において今回も生息が確認できた。生息地点では不在地点よりリター層の厚さが薄くなる結果が得られ、A層の厚さとA層における炭素貯留量が大きくなる傾向が観察された。しかし主成分分析の結果、生息適地にもっとも影響していた要因は標高であった。生息地点と土壌層位および土壌炭素との関係が認められたのは、キシャヤスデの摂食活動によって長期的に炭素貯留へ影響を及ぼしていたためではないかと考えられる。


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