| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-161

バイカル湖北部,南部および中央湖岸地域における過去5万年間の植生変遷

*志知幸治(森林総研東北), 高原 光(京都府大), Sergey Krivonogov(ロシア科学アカデミー), 渡邊隆広(東北大), 中村俊夫(名古屋大), 西村弥亜(東海大), 長谷義隆(御所浦白亜紀資料館), 河合崇欣(名古屋大)

シベリア内陸部に位置するバイカル湖周辺地域において,気候変動に対する植生の応答を明らかにするために,バイカル湖の北部,南部および中央湖岸から採取した堆積物の花粉分析を行い,それぞれの地域の過去5万年間の植生変遷を復元した。50000〜25000 14C yr BPには,南部および中央湖岸地域では,草本類にトウヒ属やカバノキ属を伴う植生が拡大したが,北部地域では,草本類やシダ植物がわずかに分布するのみの寒冷砂漠の状態であった。20000 14C yr BP頃の最終氷期最盛期には,厳しい寒冷・乾燥状態にあったため,北部のみならず南部地域でも,植生は極めて貧弱な状態であったが,中央湖岸地域では草本類主体の植生が拡大した。14500 14C yr BP以降のベーリング・アレレード温暖期には,南部および中央湖岸地域では,トウヒ属およびハンノキ属が拡大し,北部地域では,草本類やシダ植物等の植被の回復がみられた。続く,11000 14C yr BPのヤンガードライアス寒冷期には,南部地域では,花粉堆積速度が急減し,流域内での植被の減少が示唆された。同様に,北部地域でも植被の減少が認められたが,南部地域ほど顕著ではなかった。一方,中央湖岸地域では,ヨモギ属等の草本類がわずかに増加したものの,花粉堆積速度の減少は認められなかった。10000 14C yr BP以降の完新世初期の温暖化に対応して,各地域でモミ属の拡大がみられた。完新世中期の約6000 14C yr BPには,各地域でヨーロッパアカマツの拡大が顕著であった。このように,植生の応答は地域間で異なっている時期が認められた。


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