| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-205

植生の違いが捕食性テントウムシに及ぼす影響−アブラムシを介した植物とナミテントウの関係−

加茂綱嗣, 徳岡良則, 楠本良延(農環研)

ナミテントウHarmonia axyridisは、成虫と幼虫のいずれも多量のアブラムシを捕食する性質から、農業の現場で天敵としての利用が図られており、生物農薬として販売もされている。農業にとって有用な生態系サービスを維持するという観点からは、周辺の植生によって在来のナミテントウの密度が適正に維持されるのが最も望ましい。しかし、いくつかのアブラムシの種は餌としての適性に欠き、大部分のナミテントウの幼虫が成長できずに死滅する場合もあることから、単にアブラムシが多く寄生する植物が周辺に多ければナミテントウも繁殖しやすいとは考えにくい。そこで、本研究では農村に広く見られる二次林、二次草地、常緑樹林、生垣等の優占植物に寄生するアブラムシについて、ナミテントウに対する餌としての適性を室内実験により評価した。その結果より、どのような周辺植生がナミテントウの密度維持に効果的であるかを推測した。

孵化直後のナミテントウ初齢幼虫を個別飼育してアブラムシを与え、24時間ごとに生存率と成長率を5日間記録した。22種の寄主植物から採集したアブラムシを実験に供した。餌として適性の高いアブラムシの中でも、スダジイ、マテバシイ、クリ、オヒシバに寄生するアブラムシは野外でナミテントウの4齢幼虫に捕食される様子がしばしば目撃されたことから、これらの植物種はナミテントウの個体密度維持に正に働く植物種群と考えられる。また、餌として適性の低いアブラムシの寄主植物の中で、ニセアカシアとセイタカアワダチソウは、耕作放棄地、造成裸地、河川敷など農地の周辺環境への侵入性が高いことからも、ナミテントウにとって負の影響が大きいと考えられる。これらの結果から、ナミテントウの個体密度維持には、餌として適性の高いアブラムシを維持できる植生の成立や、侵入性の高い外来植物を駆除する植生管理が効果的であると示唆された。


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