| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-209

土砂還元の効果をあらわす指標種の可能性

*片野泉,佐川志朗,根岸淳二郎,皆川朋子(土研・自然共生研セ),土居秀幸(Oldenburg大),萱場祐一(土研・自然共生研セ)

土砂還元とは、ダムによって分断される河床材料の輸送の連続性を補償するため、対象となるダムの上流側(貯砂ダムなど)に堆積した細粒河床材料を、ダムの下流側に移動・設置し、さらに下流へと流下させる事業を指す。ダム下流では、粗粒化等の河床環境の劣化が知られており、土砂還元はこれを改善する可能性がある。そのため、近年では、河川環境対策を目的に掲げた土砂還元がいくつかのダムで行われているが、その効果的な還元方法(例えば、どの程度の量を、どのような頻度で還元すればよいのか等)はまだわかっていない。そこで、土砂還元の河川生態系への効果を客観的に評価することが必要となる。

生態系保全を目的とした事業を行う場合、その目的として、キーストーンとなる種を評価軸に用いることが有効であり、土砂還元についても、指標となる種を抽出することは、効果的な土砂還元の方法を検討する上で重要であろう。河川底生動物は、水質などによく反応し、河川生態系の良い指標となることが知られている。同様に、土砂還元への反応も顕著である可能性が高いと考えられる。そこで、土砂還元の効果を指標できる種があるかどうかを、底生動物の中から検討した。

近畿・中部の11ダム河川における、河床材料比および底生動物の群集組成データを利用し、一般化線形モデルを用いて、各底生動物種の生息密度と細粒河床材料構成比の対応を検討した。多くのダム河川に適応できる指標種を抽出するとともに、底生動物群集の土砂還元への反応を予測した。


日本生態学会